高速フルカラー複合機 imagio MP C7500/C6000シリーズ
High Speed Full-color MFP, imagio MP C7500/C6000 series
吉田 健
*霜田 直人
**朝田 賢一郎
***金子 良雄
****井上 暢夫
****Ken YOSHIDA Naohito SHIMOTA Kenichiro ASADA Yoshio KANEKO Nobuo INOUE
芦川 良久
****井上 祐樹
*****Yoshihisa ASHIKAWA Yuuki INOUE
要 旨 imagio MP C7500/C6000シリーズは，高画質，高安定性，高生産性を追求し，オフィス及びラ イトプロダクション市場双方からの要求に対応したデジタルフルカラー複合機である． 主な特徴は，以下の通りである． 1) 高画質化を達成する，新規小粒径重合トナー 2) 高画質・高安定性を実現する，新規現像システム 3) 最高レベルの位置合わせ精度を達成する，高精度位置合わせ技術 4) ウォームアップタイムの短縮，連続出力スピードの高速化，省エネルギー化を実現する， 低温定着トナーと定着機構の改善 5) ライトプロダクション市場で通用する用紙対応力を実現する，定着技術と給紙技術 6) ユーザビリティを配慮した操作パネル 7) アプライアンス性の高い給紙トレイ 8) クラストップレベルのTEC値を実現する，省エネ技術 ABSTRACT
The imagio MP C7500/C6000 series are disital color MFP while at the same time realizing superior image quality, stability, productivity corresponding to demands from both of office and light production market.
The major features of this product include:
1. A new type of small particle size polymerization toner provides high image quality. 2. A new type of development system provides high image quality and stability.
3. The most accurate color image positioning is made possible by new auto image positioning technology.
4. Low temperature fusing toner and improvement of a fuser provide shortening of warm-up time, speedup of continuous output speed, saving energy.
5. Fusing and paper supplying technology which improves paper compliance for a light production market.
6. A large, quick response LCD for more simplified operations.
7. Paper feed trays that feature user-friendly design which enable easier paper loading. 8. Energy saving technology to realize class top-level TEC value.
* 画像エンジン開発本部 プラットフォーム開発センター
Platform Development Center, Imaging Engine Development Division
** 画像エンジン開発本部 機能材料開発センター
Functional Material Development Center, Imaging Engine Development Division *** PP事業部 CTL/SW開発センター
Controller/Software Development Center, Production Printing Business Group **** MFP事業本部 第一設計センター
1st Designing Center, MFP Business Group ***** コントローラ開発本部 GW開発センター
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．背景と目的
近年，各社よりカラー印刷の高画質と高生産性に重 点を置いた，デジタルフルカラー複合機の新製品が相 次いで発売され，市場としても急速な拡大を続けてい る．それに対応して，各社とも新規技術の開発と導入 が行われており，これらの技術は，市場をオフィス市 場からプロダクション市場へと展開する契機となって いる． imagio MP C7500/C6000シリーズは，オフィス市場， ライトプロダクション市場双方からの要求に応えるべ く，デジタルフルカラー複合機分野におけるリコーの 技術を集結し，高画質，高安定性，高生産性を飛躍的 に向上させた新世代のデジタルカラー複合機である． 本稿では，imagio MP C7500/C6000シリーズで達成し た高画質化技術，安定性向上技術，高速化技術，用紙 対応性向上技術，アプライアンス性向上機能，省エネ 技術，セキュリティー機能について記載する．2．製品の概要
imagio MP C7500/C6000シリーズの主な仕様をTable 1 に示す．Table 1 Specification of imagio MP C7500/C6000 series.
仕様 項目 imagio MP C6000 imagio MP C7500 形式 コンソール式 複写サイズ 定形：A3～はがき，12×18～5 1/ 2×81/2 不定形：幅100～305mm，長さ:148～457.2mm 用紙紙厚 給紙トレイ：52.3g/m2～216g/m2（45～185kg） 手差し給紙：52.3g/m2～300g/m2（45～258kg） 両面時：64g/m2～163g/m2（55～140kg） 解像度 読取時：600dpi×600dpi 書込時：600dpi×600dpi 階調 256階調 ウォームアップタイム 100秒以下（室温20℃） 90秒以下（室温20℃） ファーストコピータイム モノクロ：5.7秒 フルカラー：7.5秒 モノクロ：4.9秒 フルカラー：6.4秒 A3 モノクロ：32枚 フルカラー：27枚 モノクロ：38枚 フルカラー：32枚 B4 モノクロ：37枚 フルカラー：30枚 モノクロ：49枚 フルカラー：37枚 A4 モノクロ：60枚 フルカラー：50枚 モノクロ：75枚 フルカラー：60枚 連続複写速度 （毎分） B5 モノクロ：66枚 フルカラー：54枚 モノクロ：80枚 フルカラー：66枚 複写倍率 25～400% 標準 550枚×4段＋100枚（手差し） 給紙方式 オプション リコーPPCトレイ RT39：4,000枚 リコーPPCトレイ RT39：4,000枚 A3LCT RT4000：2,000枚 最大複写枚数 9,999枚 電源 AC100V，15A，50/60Hz共通 AC100V，20A，50/60Hz共通 （100V15A電源を2個使用） 最大消費電力 1.5kW以下 2.0kW以下 大きさ 750×850×1,230mm（ADF含む） 重量 298kg
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．技術の特徴
3-1 高画質・高安定性 3-1-1 新カラーPxPトナー imagio MP C7500/C6000シリーズでは，高画質，高安 定性を高速プリントシステムで達成する為に，第2世代 のカラーPxPトナーを開発し搭載した．カラートナー としては世界最小のトナー粒径（MP C7500/C6000発売 時点）で，且つ，新規な高着色顔料を採用する事によ り，第1世代のカラーPxPトナーよりも，更に均一で滑 らかなドット再現と鮮やかなカラー画像を実現した． imagio Neo C600（以下，従来機と記す）の粉砕ト ナーと比較すると，文字周りのチリが少なく，均一な トナー層を形成しており，文字イメージを忠実に再現 していることがわかる（Fig.1）． また，新規形状制御技術により，クリーニングし難 い小粒径トナーであっても，第1世代のカラーPxPト ナーより高速プリント時のクリーニング性能を向上さ せる事が出来た．Fig.1 Comparison of New color PxP toner and conventional toner. 3-1-2 新規現像システム 本製品では，画像濃度の高安定性を達成するための 新規現像システムを搭載した． このシステムは，現像ローラ長手方向でのトナー濃 度偏差を低減し，かつ補給されたトナーの現像剤中の 新カラーPxPトナー 従来トナー
分散性を向上させる技術である．この技術により，画 像内での濃度偏差と，リピート出力による濃度の変動 が従来機と比較して飛躍的に向上した． 3-1-3 駆動系・駆動制御 下記に紹介する色ずれ（版ずれ）防止のための高精 度位置合わせ技術，及び，バンディング低減技術を新 規に開発・搭載し，高画質化を達成した． (1) 高精度位置合せ技術 従来機で搭載した，中間転写ベルトの走行安定のた めのベルトスケールによるフィードバック制御駆動に， 更なる高精度化をはかった． (2) バンディング低減技術 本製品では，新規のジョイントを開発し搭載するこ とにより，ギヤの振動を排除し，バンディングの発生 のない良好な画像を提供した． 3-1-4 画像処理技術 新開発の画像処理ASICの採用で豊かな階調性のある 画像処理をおこなっている． さらにリコー独自の画像処理技術「DT（Dither amplitude Threshold error diffusion）処理」により，読 み取った画像の文字と写真を分離し，文字は高解像で くっきり，写真は滑らかで階調性豊かに，バランスの 取れた高画質を実現している． 特にシャドー部の色再現性の向上を目的とし，墨処 理方式の最適化，及び総量規制方式の最適化を実施し た．結果，色再現領域が拡大し（従来比105％），色再 現性の向上のみならず，付随的に滑らかな階調性の実 現など，高画質化を実現した．
Fig.2 Image processing ASIC.
3-2 高生産性 3-2-1 低温定着トナーと定着機構の改善 本製品では，低温定着が可能な新カラーPxPトナー の採用と，定着機構の改善により，ウォームアップ時 間がMP C7500では90秒以下，MP C6000では100秒以下 を実現し，従来機と比較しFig.3のように約1/5に時間短 縮した． 定着機構の改善は，定着ローラの素材を従来機のゴ ムからスポンジに変更することにより，ニップ幅拡大 による定着温度の低減及び，大量出力時の温度低下を 軽減させたことと，従来機より加熱ローラを薄肉化し て熱効率を高め，昇温時間の短縮を行ったことにより 実現した． MP C6000 従来機 0 250秒 480秒 約1/5に短縮 100秒以下 500秒 MP C6000 従来機 0 250秒 480秒 約1/5に短縮 100秒以下 500秒
Fig.3 Comparison of warming-up time.
Fig.4 Overview of fusing unit.
3-2-2 画質調整時間 一般的に，カラー複合機では画質維持のために各種 調整が入る．高い生産性の確保という観点からこの調 整時間の短縮は重要であり，市場からの要望も多い． 本製品では，前述の現像システムを初めとする作像 エンジンの改善により，この調整時間，及び動作頻度 を削減することができ，生産性と安定した高画質の両 立を実現した.
尚，調整時間はTable 2のように従来機の約1/3に削減 することができた．
Table 2 Comparison of adjustment time.
MP C 7500 MP C 6000 Neo C600 カラー調整時間 17秒以下 20秒以下 55秒以下 3-2-3 スキャンスピードの向上 新たにカラー4チャンネルCCDを採用することにより， 読み取り品質と速度を向上した． ARDF（自動両面反転原稿送り装置）と組み合わせ ることにより，白黒：81ページ／分，カラー：69ペー ジ／分の高速スキャンを実現した． ※A4ヨコ，200dpi時 Fig.5 View of 4ch CCD. 3-3 用紙対応力 3-3-1 定着機構の改善 ライトプロダクション市場では様々な用紙が使われ るため，用紙対応力の向上が求められる． 本製品では，厚紙の微小光沢ムラ画像対応と，機械 動作速度種類を増やすことによる設定定着温度の安定 化を行い，300g/m2までの全紙厚範囲での高画質出力を 可能にした． 3-3-2 給紙・搬送性の向上 本製品では，ライトプロダクション市場でニーズの 高い厚紙や塗工紙に対応する給紙装置を搭載した． 最大300g/m2の厚紙まで給紙可能な手差しトレイと， 用紙同士の密着により重送や紙詰まりが発生し易い塗工 紙に対してエアーアシスト（吹付け）機能を備えたオプ ション大量給紙トレイを開発し，搭載した．エアーアシ スト機能とは，ファンで風を用紙に吹付けることで，湿 気などによる用紙の密着を軽減する技術である． オプション大量給紙トレイはハガキからA3ノビサイ ズ（12×18インチ）まで最大2000枚積載可能とし，最 大300g/m2の厚紙まで給紙可能とした． 以上によりカードや台紙，カタログやパンフレット など様々な用紙に印刷可能となった． 本 体 給 紙 ト レ イ も 従 来 機 よ り も 約1.7 倍 と な る 216g/m2の厚紙まで対応し，自動両面は約1.3倍となる 163g/m2の厚紙まで搬送できるようになり，用紙対応力 が向上した． 3-4 アプライアンス 3-4-1 操作パネル 幅広いお客様に快適にお使いいただけるカラー複合 機となるよう，ユーザビリティの向上，アクセシビリ ティ対応に取り組んだ． 本製品では，操作パネルのLEDの発光色を，ほとん ど全ての色弱の方が判別できるように選定するととも に，色に頼らない表示を実現し，カラーユニバーサル デザイン認証を取得した． また，操作パネルは8.5インチのカラーTFT，38.4万 画素の高精細液晶を採用し，操作画面の視認性を従来 機に比べ大幅に向上させた． さらに，トナー交換，紙詰まりなどの処理をアニ メーション表示することにより判りやすい操作を可能 とした．
3-4-2 給紙トレイ 順手でも逆手でもアクセス可能な取手形状を採用し， 用紙補給時の負担を軽減した． また，給紙トレイのバックフェンスの操作性を改善 し，詳しい操作を知らなくても自然に操作ができるよ うにした．
Fig.7 Paper tray.
3-5 省エネルギー 省エネ技術においては，下記に紹介する新規技術搭 載と，3-2-1で技術紹介されている低温定着トナーと定 着機構の改善により，従来機に対して大幅にウォーム アップ時間短縮・消費電力低減ができ，世界基準のエ ナジースター指標で業界クラストップレベルを達成し た（Fig.8）． 3-5-1 エンジン制御の高速起動化 省エネ復帰監視部からエンジン制御部に復帰要因の 情報を直接通知する，立上げモード通知機能を搭載し ている．この機能により，エンジン制御部が直ちに各 復帰要因に応じた起動シーケンスを開始でき，エンジ ン制御の起動時間短縮を実現した． 3-5-2 コントローラ制御の高速起動・低電力化 コントローラ制御部に，Suspend To RAM機能を搭載 している．コントローラ制御の起動時間短縮と，省エ ネモードの消費電力低減の両立を実現した． 3-5-3 電力配分の最適化 各負荷変動に応じ，定着部への供給電力をフレキシ ブルに可変できる電力制御機能を搭載している．3-5-1 で技術紹介したエンジン制御の高速起動化と合わせて， ウォームアップ時間短縮に大きく貢献している． （国際ｴ ﾈﾙｷﾞｰ ｽﾀｰ） 基準 値 0 5 10 15 20 25 20 30 40 50 60 70 80 コピー速度（ｉｐｍ）：B/W ＴＥＣ値（kWｈ） Venus-C１ｂ ＴＥＣ：標準消費電力量
(Typical Electricity Consumption)
MP C7500 SP 約１／２に低減 Neo C600 モ デ ル７５ MP C6000 SP （国際ｴ ﾈﾙｷﾞｰ ｽﾀｰ） 基準 値 0 5 10 15 20 25 20 30 40 50 60 70 80 コピー速度（ｉｐｍ）：B/W ＴＥＣ値（kWｈ） Venus-C１ｂ ＴＥＣ：標準消費電力量
(Typical Electricity Consumption)
MP C7500 SP
約１／２に低減
Neo C600 モ デ ル７５
MP C6000 SP
Fig.8 Relation between copy speed and TEC.
3-6 セキュリティー機能 コピー，プリンター，スキャナー，ファックス，ド キュメントボックスといったそれぞれの機能について， 登録されたユーザーごとに利用制限を行うことができ る． また，8桁までの数字を使ったユーザーコードによる 認証に加え，ユーザー名とパスワードを使ったハイレ ベルなユーザー認証システムを搭載している． ICカードによる個人認証システムにより印刷物の置 き忘れによる情報漏洩や，通信データの暗号化により ネットワーク情報の盗み見を防いでいる． 更に，HDD残存データ消去や暗号化にも対応し，多 様なニーズに対応している．
4．今後の展開
imagio MP C7500/C6000シリーズは発売以来，国内外 ともに好調な販売実績を維持しており，安定した稼動 品質がオフィスのみならずプロダクション市場のお客 様にも好評を得ている． 今後は，本機の開発において蓄積された多くの技術 を発展させ，更なる高画質，高安定性，高生産性を追 求すると共に，アプライアンス，ユーザビリティの面でも更に充実した，顧客起点の魅力ある商品の開発を 進めていく．
最後に，本機の開発，商品化にあたり，関連する多 くの方々にご指導，ご支援を頂きましたことを深く感 謝致します．
